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レバレッジ投信の知られざる落とし穴とデメリットを徹底解説。

2020 6/09
レバレッジ投信の知られざる落とし穴とデメリットを徹底解説。
レバレッジ投信が人気となっており、投信会社もこぞって中長期的な保有目的としてレバレッジ投信への投資を推奨しています。
 
以前はレバレッジ投信というと、短期的に大きく上昇や下落をするようなボラティリティ(変動率)の高い状況下で大きなリターンを望むことができる「ブル・ベア型」が主流でありましたが、現在は政府の積立投資の推進に乗っかり、多くの投信会社がレバレッジ投信を活用した長期積立に活路を見出しております。
 
ただ、投資家の多くはレバレッジ投信の内容をしっかりと理解しないまま積立ているが現状なので、レバレッジ投信落とし穴をシロウト投資家にもわかりやすく解説します。
 
 
目次

レバレッジ投信とは

 
レバレッジと投信のレバレッジとは「テコの原理」のことです。
 
シロウト投資家にはあまり馴染みの無い言葉ですが、実はレバレッジという行為は我々の生活にかなり密接しています。
 
例えば、「マンションをローンで購入する」こともレバレッジ(テコの原理)に該当します。平易には、「現資産(マンション)を担保にして、お金を借りることで手元資金以上の資産を手にする。」という行為です。
 
 
これを投資信託に当てはめると、「現資産(投資資金)を担保にして、お金を借りることで手元資金のみでは運用できない資産を手にする。」ということになります。
 
レバレッジ投信は、少ない元手で何倍もの資産を保有したと同じ状態を作り出すことで、より高いリターンを得ることができるメリットがある一方、その分損失も大きくなり通常よりもリスクが高い投資信託と言えます。
 
 
貯金400万円の人が5000万円のマンションをローンで購入
 
・マンション価値が10%上昇し売却 ⇨ 500万円の利益
・マンション価値が10%下落し売却 ⇨ 500万円損失
 
貯金が400万円の人では到底不可能な利益をレバレッジをかけることで得ることができる。
 
レバレッジ投資の基本的な考え方は以上です。
 
豆知識
不動産投資をやる人が多い理由は、上記のレバレッジ効果を得ることができる為です。国内では、個人の運用において株や投資信託での運用に銀行はお金を貸しませんが、不動産投資にはお金を貸します。(法的担保設定ができる為)したがって、日本人が運用で大きなレバレッジ手段を取れる投資手段の一つが不動産投資なのです。
 
ミク
ミク
レバレッジという言葉は案外身近に存在するんですね。

しっかりとレバレッジの意味を理解した上で投資しないと思いがけない損失を被ってしまうから注意しよう。
マッケイ
マッケイ


レバレッジ投資がなぜ流行るのか

少ない元手で大きなリターンが得られる

 
上述しましたが、レバレッジ投資最大のメリットは「少ない元手で大きな利益を得ることができる」点です。
 
積立投資をしている方の多くは若い方で、「収入がありリスクも取れるけれども、現時点での資産は多く無い。」という方です。
 
したがって、このレバレッジ投信のメリットは、積立投資家には表面的にマッチしているように見えるのです。

運用手数料の引き下げ

 
レバレッジ投信(ブルベア含)は、短期的には大きな利益をもたらすことができ、いつの時代もレバレッジニーズは一定数ある為運用手数料が通常よりも高く設定されているのが一般的でした。
 
しかし、積立運用ブームが到来し、中長期運用目的の投信は購入時手数料が無料で信託報酬も割安であることが一般化してきているので、レバレッジ投信もこのブームに乗る為に、購入時手数料を無料とし、レバレッジ投信ながら1%を切る低信託報酬化により投資ハードルが一気に下がりました。
 
「同じようなコストだったら運用効率の良いレバレッジ投信の方がお得でしょ。」と考えるシロウト投資家が激増したのです。

負債にならない

 
不動産投資の場合は自分の手で銀行から借金をする為、仮に不動産価値が大きく下がった状態で売却をした場合、手元には多額の借金だけが残ります。
 
多額のローンを組んでマンション購入したものの、ローンを払えなくなり負債の方が多く残るなんて方もたまにいますね。
 
多くの方は、この負債による資産のマイナス現象が起こることを嫌う為、借り入れをした運用を嫌います。
 
しかし、レバレッジ投信の場合は仮に損失が発生しても、信用取引等のように追証などはありません
 
テコの原理を利用して大きな運用ができる反面、最大損失額は投資金額に留まるという点がニーズを押し上げている大きな要因なのです。

単純に上がった時はマーケットの◯倍になると考えている

 
シロウト投資家は、「S&Pレバレッジ4倍ファンド」であれば単純に利益が出る時は、S&Pインデックスの4倍儲かると思っています。
 
100万円の投資で400万円分の投資をしているのと同じ状況を作り出せると勘違いをしているのです。400万円でノーマルのインデックス投信で運用している人と、100万円で4倍のレバレッジ投信を運用している人の数年後の運用成績は異なっているということを理解していません。
 
表面上の運用効率だけを考えた投資行動を起こすシロウト投資家がまだまだ多いのが現状です。
早速、レバレッジ投信の落とし穴を確認しよう。実際の投資信託「iFreeレバレッジ NASDAQ100」の資料を活用するよ。
マッケイ
マッケイ

落とし穴① レバレッジによる資産価値の自然滅失

 
レバレッジ投信は決して、インデックス投資信託の値動きに追随するものではありません。
 
 
100万円投資 ⇨ 翌日50%の損失(50万円)⇨ 翌々日50%利益(75万円)
※計算式:100万円×50%×150%
 
 
これが下落先行時における資産価値の自然滅失です。
 
実際のレバレッジ投信「iFreeレバレッジ NASDAQ100」には下記のように記載されています。

 

【出所】大和アセットマネジメント「iFreeレバレッジ NASDAQ100」交付目論見書
 
「iFreeレバレッジ NASDAQ100」は指数の2倍の運用を目指すレバレッジ型ファンドですが、実際の運用では指数の2倍にはならないことがわかります。
 
 
(1)上昇下落を繰り返している場合
上昇した場合の恩恵は2倍以下となり、下落した場合の損失は2倍以下になる
 
(2)一本調子に上昇下落をした場合
上昇した場合の恩恵は2倍以上になり、下落した場合の損失は2倍以上になる
 
 
この理解が非常に重要になります。
 
続いて、過去(2)のような状況がどれくらいの期間続いたか考察します。
 
【出所】日経プロフィル「連続日数上位」
 
 
統計上では、過去最長連騰日数は2017年の16日間であり、その前は50年以上前の1960年の14日間です。
 
長期投資において、(2)になる可能性はかなり低いことが理解できると思います。通常は(1)になることがほどんどで、仮に上昇下落を繰り返しながら上昇した場合は、2倍のリターンは取れないということです。

指数下落パターングラフの意味

【出所】大和アセットマネジメント「iFreeレバレッジ NASDAQ100」交付目論見書
 
 
(1-1) 一方的に下落した場合 ⇨ 2倍以上の損失
 
(2-1)上下繰り返しながら下落 ⇨ 2倍以下の損失
 

指数上昇パターングラフの意味

【出所】大和アセットマネジメント「iFreeレバレッジ NASDAQ100」交付目論見書

(1-2) 長期的に一方的な上昇    ⇨ 2倍以上の利益
 
(2-2)上下繰り返しながら上昇 ⇨ 2倍以下の利益
 
長期的に指数が上昇しても、2倍のリターンはでない!
 
 
積立投資家が実際に狙う相場は(2-2)のパターンであり、この相場になった場合は取るリスクよりもリターンが小さいという結果になります。
 
つまり、積立投資の本来の趣旨とはズレていることがわかります。このことは交付目論見書にもしっかり記載されているということを認識しなければなりません。
 
ミク
ミク
なんだか難しいわ。。

いきなり全てを理解するのは難しいから、表面的な落とし穴のポイントだけでもまずは頭に入れておこう。
マッケイ
マッケイ

レバレッジ投信の基本戦略は「高く買って、安く売る」

 
続いて、運用方針を確認してみよう。
マッケイ
マッケイ
 
【運用方針】
 
日々の基準価額の値動きがNASDAQ100指数(米ドルベース)の値動きの2倍程度となることをめざします。株式の組入総額と株価指数先物取引の買建玉の時価総額の合計額が、原則として信託財産の純資産総額の2倍程度になるように調整します。
 
【出所】大和アセットマネジメント「iFreeレバレッジ NASDAQ100」運用方針
 
 
例えば、現在の純資産が100円の場合には先物は2倍の200円持っていることになります。ここから10%上昇した場合、先物は220円(利益20円)になります。その時の純資産と利益の合計は120円になります。
 
ファンドは「日々の値動きの2倍」に調整するので、120円×2=240円分の先物を保有しなければなりませんが、先物は220円分しか持っていません。そこで、差額の20円分を購入して2倍を維持しようとします。
 
下落している場合も同様、10%下落した場合の先物は20円の損失になり、純資産は80円に値下がりします。その時の先物保有分は180円になり、「日々の値動きの2倍」にするためには先物を20円分多く持ちすぎているため売却します。
 
つまり、
 
上昇したら購入し、下落したら売却するという戦略を自動的に取っている
 
ということです。
 
ちなみに、積立投資の基本はみなさんご存知だと思います。
 
上昇時には購入額は少なく、下落時には購入額を多くする。
 
つまり、逆張りの投資戦略なのです。
 
このような側面からもレバレッジ投信が積立投資家の投資方針とは真逆をいく戦略であることが理解できます。

なぜ投信会社はレバレッジ投信を販売するのか

 
積立投資は政府の後押しもありマーケットとして拡大基調にあります。
 
そしてその流れは長期に渡って継続することが分かっている反面、投資家の厳しいコスト感から今までのような購入時手数料や信託報酬は取れないのも現状なのです。
 
レバレッジ投信を投入することで投資家にインデックス以上のリターンを出せる可能性が生まれるため、インデックス投信よりも高い信託報酬(約3〜10倍程度)を設定できるわけです。
 
ちなみに投資対象はあくまでインデックスなので、運用も非常にシンプルで運用コストもあまり高くないです。
 
政府の後押しによる積立投資ブームやその市場規模に乗りながら、現状よりも利益水準を高く設定できるいわば投信業界のNEWヒーローがレバレッジ投信なのです。
 
レバレッジ投信による積立を推薦するものの、積立NISAの指定投資信託対象外になっている点からもレバレッジ投信の立ち位置が垣間見れるでしょう。

まとめ

レバレッジ投信は決して悪い商品ではなく、うまく活用すれば現資産以上のリターンを享受できる投資商品です。
 
しかし、上昇時はインデックスの◯倍になるという安易な発想だけで手をつけるのはナンセンスで、決してハイパフォ投資家が取る行動ではありません。
 
投資する場合は、しっかり交付目論見書を読みリスクリターンを理解した上で投資しましょう。

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