「グローバル3倍3分法」というレバレッジ投資信託があります。
仕組みが非常に特徴的で、レバレッジ投信でありながら信託報酬が他のインデックス投資信託と遜色ない低コスト投信であり、長期投資を意識したファンドです。
最近の長期積立投資ブームに相まってこのようなインデックス・バランス型投資信託が増えているので、今回その中でも特に人気の高い「グローバル3倍3分法ファンド」に長期投資妙味があるのかを実際に買ってみたマッケイが解説します。
※レバレッジ投信の基本概念は記載していないので、あらかじめ下記記事で勉強しておく事をオススメします。
レバレッジ投信を学ぼう
目次
グローバル3倍3分法ファンドの特徴とは
グローバル3倍3分法ファンド3つ特徴
・株式(60%))、REIT(40%)、債券(200%)に分散投資
・日本株と債券は先物でレバレッジ運用を行う
・運用割合の変更はなし(アセットアロケーション運用ではない)

【出所】グローバル3倍3分法ファンド交付目論見書
グローバル3倍3分法ファンドはレバレッジ投信なので仕組みを難しく捉える方もいますが、実は比較的シンプルなバランスファンドです。
投資資金のベースは「海外株式とREIT(不動産)」であることをが上の図で分かりますね。
まず、投資した資金のうちは海外株式とREITの現物に40%ずつ投資をします。
そして、余った現金20%部分で、日本株式20%と先進国国債200%になるようなレバレッジをかけます。
国内外REIT(40%)+海外株式(40%)+日本株(20%)+国債(200%)=計300%
となります。
日本株のみ先物で運用していることに違和感を覚える方がいるかもしれませんが、このファンドは日本株市場に重きをおいておらず、現物資金を日本株に利用するのはもったいないので、申し訳程度に株式ポートフォリオ分散のため先物で調達していると考えられます。
なぜ先進国国債を株式の2倍保有するのか
最大のポイントは、先進国国債を先物で運用している点にあります。
通常、債券は株式との相関関係が低く逆相関関係になるのが一般的です。
債券のリスクリターンは、一般的に株式のリスクリターンを下回るマイルドな動きになります。
株式と債券の割合を一定にした場合は、上昇する際も下落する際も株式の値動きの方が大きいので結果的に株式の値動き次第という状況になります。

そこで、先進国国債を株式ポートフォリオの2倍持つことで、国債がクッションになり下落相場にもしっかりリスクヘッジが行われるということです。
なぜ先進国国債にレバレッジをかけるのか
先物で運用する意味は「資金効率を上げる為」です。
仮にリスクヘッジの為に株式ポートオフォリオの2倍の資金で債券を保有しようとすると、総投資額の3割しか株式に投資をすることができません。
相場下落時の下落率はマイルドになるものの、相場上昇時の上昇率が低く、上昇を期待している投資家の期待に答えれないというバランスファンド特有のジレンマが存在します。
その場合の実際の投資家心理は以下のようになります。
投資家A
株式のみのファンドは相場下落時にはそれなりに下がることを分かって投資しているからいいよ。上がる時はしっかり上がるからね。
投資家A
バランスファンドは、下落時にそこまで下がらないかもしれないけど、結局一定水準は下がるし、むしろ上がる時は株ほど上がらないからどちらに転んでもいい気がしないんだよな。
そうですね。それはバランスファンドの宿命ですね。

マッケイ
先物を利用することで株式運用にまわせるお金が増え、上昇時には従来のバランスファンドの約3倍の投資効率=現物株式100%保有時と同じレベルの上昇を期待することが可能になるわけです。

ミク
従来は分散すると期待上昇率も下がるけれども、先物を使うことで期待上昇率を維持しながら分散が行えるということですね。
そういうことだよ。その分ボラティリティ(変動率)も高くなることも知っておこう。

マッケイ
グローバル3倍3分法のデメリットは?
金利の低下=国債価格の上昇を前提にしている
グローバル3倍3分法は先進国国債を先物で運用しており、現在は世界的な低金利下(一部国債はマイナス金利)である為、国債先物の調達コストがとても安いか、むしろコストではなくプレミアム状態と言えます。
マイナス金利下での国債先物購入
国債先物を購入
⇩
マイナス金利でお金を借りて国債を買っている状態
=お金をもらいながら国債で運用している状態
となります。

ミク
逆に今後金利が上昇してきたら、コストも上がってさらに国債価格も下落するってこと?
その通りなんだ。
今までは長期的も金利がずっと低下し続け国債価格が上がってきた環境だから良かったけど、これが逆回転すると2重苦になってしまうリスクがあるんだ。
今までは長期的も金利がずっと低下し続け国債価格が上がってきた環境だから良かったけど、これが逆回転すると2重苦になってしまうリスクがあるんだ。

マッケイ
金利上昇局面になった場合は国債の価格は下落しますが、その際に同じように株式が上昇するわけではありません。
仮に株式が上がらない、むしろ下落してしまう局面ではファンド内で下落が下落を生む状態になってしまいます。
金利上昇局面では想定以上の価格下落の可能性あることを覚えておこう。
実際の値動きを比較してみよう
それでは、実際の値動きを異なるファンドと比較してみましょう。
分かり安くNISA銘柄で人気の「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」という米国株式市場のみに投資をする低コストインデックスファンドの代表格と比較してます。

パフォーマンスを比較すると、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の方良い事が分かります。
分散あるあるですが、大幅な株式やREITの下落に債券の上昇がついていけず下落し、その後株式は一定の上昇を見せたものの、REITが上がらず、債券も下落したことで株式の上昇率を打ち消してしまったと言えます。

【出所】グローバル3倍3分法ファンド マンスリーレポート 3/31/2020現在
株式や債券、REITが一方的に大幅に上昇する局面では強みを発揮しますが、それらが一方的に下落してしまう局面や、どのアセットも上がらず下がらずの状況下では、お互いの上昇を打ち消しあってしまうので負のスパイラルのなってしまう事が分かります。
まとめ
保有コストは安いため、長期運用には比較的向いている
レバレッジを聞かせたバランスファンドで信託報酬が0.484%程度というのは、レバレッジ投信界の新たなスタンダードになりうる水準のファンドと言えます。
非レバレッジ型のバランスファンドとほぼ同水準のため、資金効率を高めながらバランス運用できる点は評価できます。
メインファンドとして持つにはリスクが高い
レバレッジファンドはあくまでサブ的な要素で保有した方が良さそうです。
先進国国債先物やREIT、海外株式までを幅広く保有するグローバル3倍3分法ファンドは、レバレッジの逆回転(金利上昇による国債下落、株価や不動産価格の暴落及び3資産同時下落)が起こった場合には下落が下落を生み、回復困難な状況に陥る場合も想定されます。
ポートフォリオ分散の一環として、低コストで国債先物を保有してみたい方はレバレッジ量を勘案して投資資金を決めながら運用してみても良いかもしれません。
長期投資のベースはやはりつみたてNISA
グローバル3倍3分法はレバレッジ投信の為つみたてNISAの対象外です。
シロウト投資家は安易に手を出さずに、まずはつみたてNISAやiDeCoでグローバル株式メインの長期投資ポートフォリオを基盤にしましょう。
その後、レバレッジを利用したポートフォリオ拡大、国債先物への分散投資という意味で投資を行っていくことをオススメします。
その際には、相対的な現物運用比率との割合を勘案し投資量はポートフォリオ全体の1/3以下に抑えたた法が無難でしょう。