日本でも数年前からシェアサービスが普及しており、「保有する時代」から「共有する時代」へライフスタイルがシフトしつつあります。
シェアサービスというものはシェアすることでより大きい固定費の削減が見込まれる市場ほどマーケットの伸びしろも高いと言えます。
そして、我々が生きていく上で多くの人にとって最も大きなコストは「家」と「自動車」です。
固定費の二代巨頭とも言えるこの分野が「保有型」から「シェア型」に移行すれば家計は大きく改善します。
特に米国は国土が大きい分、NY等の大都会を除いて基本は車社会です。
車の保有台数世界1位のアメリカでは2億8149万9000台となっており、2位の中国の比べても6,000万台上回っている車大国なのです。
そのような中、数年前から「ライドシェア」という移動を焦点に当てたシェアサービスが台頭しており、その代表格の一つがリフトです。
ここで似たようなシェアサービスで「カーシェア」というシェアサービスがありますが、「カーシェア」と「ライドシェア」は全く異なるシェアサービスです。
カーシェア:車自体に焦点を当てたシェアサービス
ライドシェア:移動手段に焦点を当てたシェアーサービス
つまり、カーシェアは車を時間割して提供するシェア方法ですが、ライドシェアはあくまでも目的地まで移動そのものをシェアするため、目的地まで人間を運ぶモノは別に車に限ったことではありません。
リフトのビジネスモデル
実は、リフトのビジネスモデルは本来の意味では日本人に限っては馴染みのないものです。
なぜなら、日本ではリフトのような第二種運転免許を持たずにタクシー行為を行う白タクが認められておらず、Uberが以前に日本市場に参入した際も最終的には撤退を余儀なくされました。
白タクが出回ると価格競争、そしてスケール感でタクシー業界が衰退することが目に見えているからです。
ただ、似たようなビジネスモデルで日本にはJAPAN TAXIやUberアプリが存在します。
どちらも呼ぶことができるのは第二種運転免許を保有した「タクシー」ですが、アプリで移動手段を確定させ、目的地まで運んでもらうという意味では類似したサービスになります。
顧客メリット
・タクシーを呼ぶ必要がなく、リフトアプリ内で簡単に迅速に車をマッチングさせることができる。
・一定の場所であれば無料で乗ることもでき、時間帯によってはディスカウント価格もある。
・既存タクシーより料金が安い
ドライバーメリット
・副業としても簡単にトライバー登録ができ、副収入を得られる。
・拘束時間がないので稼ぎたい時に稼げる。
・支払いがとても簡単で、20%のライド手数料を除いてドライバーに支払われる。
リフトのビジネスモデルは、乗客とドライバーをマッチングさせることにあり、ライド価格は距離や乗車時間などに応じてリフト側が規定した価格が自動的に算定されます。(この算定方法が不透明という意見もある)
ライドシェアサービスはとにかく売り手(ドライバー)を集め、集めたドライバーが稼働することで乗車回数そして乗車距離が伸びなければビジネスが回りません。
もともとアメリカは副業に寛容な国であり、日本のサラリーマン社会と違いフリランスとしての働き方もすでに根付いていてドライバーは集めやすい状態にあるので、あとはどれくらい乗車客が増ええるかがビジネスの肝になります。
IPOをした2019年の有価証券報告書によると、稼働している乗車客は2年で5倍以上成長しており、乗車客一人あたりの乗車単価、そして乗車回数も大きく成長していることが分かります。


また、リフトは移動手段全般をビジネスとして手がけているため、根幹となる「LYFT」の他「Lyft plus」という大人数向けの7人シートの配車サービスや、「Lyft line」という相乗りサービスも展開しています。

ちなみにリフトは2009年にZimrideという会社名でスタートしていて、その時に初めて出したライドシェアプラットフォームが現Lyft lineなんだ。
これは、路線バスとタクシーを融合させたようなサービスで、相乗りなので直行ではありませんが通常より割安に敗者サービスを利用できます。
これらが主なマネタイズポイントですが、その他にもライバル企業であるUberと類似しているヒートマップも持ち合わせており、需要がより多い地域や時間では通常よりもドライバー側から得る手数料が高くなる設計になっています。これもまた主要な収益源となっています。
最近ではリフトでドライバーをやってみたいけど車がない人のために、レンタカー会社と提携して車を提供するサービスも展開しています。
リフトの財務状況と株価の将来性
財務状況
まずはリフトの財務状況を見てみましょう。

2019年までは順調に成長をしていましたが、昨年はコロナの影響もあり大きく減収となっています。
特にアメリカ全土でコロナによるロックダウンで人の移動が完全に止まってしまった時期もあり、徐々に回復傾向にあるとはいえ、その他交通機関同様大きな影響を受けている業種の一つです。
全体では40%が粗利益となっており、これはその他のIT企業と比べても決して高い水準ではありませんが、類似ビジネスモデルのUberが約50%であることを勘案すると、若干少ないように思えます。

もちろんUberはライドシェアの他にも様々なビジネスを手がけているので一概には言えません。
株価の将来性

2020/2時点での株価は$55.70をつけており、IPO以来のチャートをみると2020/10に底つけてからは急激に株価を戻しており、IPO時の株価水準に戻りつつあります。
これは、コロナで大打撃を受けたライドシェア市場も徐々に回復傾向にあり、乗車数や乗車金額が徐々に戻ってきている点や現社長による厳しいコストカットが功を奏しています。

米国のコロナ事情も徐々に落ち着きを取り戻し夏場になるにつれ一層の業績回復が見込まれる為株価もそれを織り込みつつあり、直近ではIPO時の株価を超えられるかが一つの焦点となりそうです。
ビジネスとしての将来性を見てみると「ライドシェア市場」は中長期的には間違いなく成長市場でありその潜在的な市場規模はとてつもなく大きいと言えます。
ただ、現状ではビジネス上様々な問題があります。
Uberでは、ドライバーの個人営業という側面からドライバーに対する規制が緩く過去2年間で6,000件近くの性犯罪事件が起きていたり、ドライバーが増えすぎてしまうことで交通状況の悪化が懸念されており、ドライバーのマナーにも問題が提起されています。
労働条件も決していいとは言えず、フレキシブルに働けるとはいえ車の維持費が掛かる一方比較的高い手数料や福利厚生(保険等)の条件に納得していないドライバーがいるのも事実です。
ただ、このような問題が徐々に解決されることでさらに市場は活性化することが見込まれ、事実上のUberとの2強体制でどこまで成長できるかがとても楽しみな企業でもあります。

