こんにちはっ!外資系バンカーのマッケイです。
今回は意外と知らない経済用語シリーズの第一弾として「イールドカーブコントロール」について超わかりやすく解説します。
なぜ、経済用語シリーズを始めようと思ったかというと、ここ数年でつみたてNISAやiDeCo等が普及したおかげでシロウト投資家さん達の資産運用参入が増えたじゃないですか。
それ自体はいいことなんですけど、経済に対してあまりに無頓着なまま運用を始めちゃっている人が多いような気がするんです。
目先の値動きばかりを気にしたり、とりあえずよくわからんけど米株やっとけ〜的なノリですね。
イールドカーブコントロールのような小難しい経済用語を知ったからといって別に儲かるわけでもなんでもないんですが、せっかく投資始めたならこういう経済そのものの動きも少しづつ知ることでもっと投資が面白くなることを知って欲しいなと思って初めてみました。
マッケイの経済用語シリーズはとにかくシロウト向けにわかりやすく解説しますので、いわゆる経済学的な本質を問う解説はしません。
できるだけ平易な言葉を使って説明していくので、なんとなくイメージしていただくにはちょうど良いコラムだと思います。
それではいきましょう!
目次
そもそもイールドカーブとは何か
イールドカーブコントロールって知っている?

マッケイ

ミク
う〜ん、なんか聞いたことあるわ。2016年に日銀の黒田総裁が始めたやつでしょ?でもよくわからないわ。
イールドカーブコントロールってね、実は今とても注目されている金融政策の一つなんだ。ついにアメリカも2020年内に採用を検討しているんだよ。

マッケイ

ミク
もしかして、日本発ってやつ?
その通り!日本はNISAとかマイナス金利政策とか、諸外国を参考にした施策が多い中、イールドカーブコントロールは主要国では日本が初めて導入した金融政策なんだ。

マッケイ
そもそもイールドとは日本語で利回りのことを指します。
つまりイールドカーブは日本語にすると「利回り曲線」って意味になります。

通常この利回り曲線は縦軸を利回り、横軸を債券の償還までの年数とします。
償還までの期間が長ければ長いほど利回りが高くなるため基本的には「なだらかな右肩上がりの曲線」になりますが、景気後退期には一時的に右肩下りになる場合もあります。
ポイント
償還までの期間が長い債券=高利回り・高リスク
償還までの期間が短い債券=低い利回り・低リスク

ミク
なんで景気後退期には右肩下りになる場合があるの?
景気後退期は「金融緩和」と言って、日銀が自ら国債を買いまくってお金の循環をよくしようとする施策をとるんだ。長期国債を買いまくることで長期国債の値段が上がり利回りが大きく下がってしまうんだ。それによって期間の短い国債と利回りと変わらなくなるか、むしろ悪くなってしまうわけ。

マッケイ

ミク
確かに、黒田総裁になってから金融緩和という言葉がすごい出てきたわ。あっ!もしかして、金融緩和をやりすぎたってこと!?
イールドカーブをコントロールする理由
その通り!事の発端は金融緩和をやりすぎて、長期国債の利回りまでもマイナスになってしまったんだ。

マッケイ
日銀的には「やべ〜、国債買いすぎて長期金利までマイナスになってもうた〜。」って話です。
そもそもマイナス金利施策により短期債は基本マイナス利回りなのに、そこに拍車をかけるように国債を買いまくったので長期国債まで利回りがマイナスになってしまったんです。

ミク
長期国債がマイナスだとダメなの?
銀行とか保険会社は10年物の国債(長期債)をベースに作ってる商品も多く、この運用利回りがマイナスになると儲からないどころかビジネスがそもそも成り立たなくなってしまうんだ。さすがにそれはまずいでしょ?

マッケイ
10年物国債がマイナス利回りなのはさすがに金融機関泣かせになるので、とりえず0%まで持っていきましょう、っていうのがイールドカーブコントロールなんです。
長期金利のコントロールは難しい?
実は、イールドカーブコントロールは簡単にできるものではないのです。
ポイント
短期金利操作=比較的容易
長期金利操作=難しい
もともと、長期金利はマーケットにより決められるものという前提があり、中央銀行はまず短期金利を操作することでそれが長期金利に波及し実体経済に影響を及ぼす、と言う考え方が一般的でした。
しかしリーマンショック以降は米欧が短期金利を動かせるだけ動かしてしまったので、「もう国債を買いまくって長期金利を動かすしかない!」と長期金利の引き下げに走ったんです。
ただ、よく考えてください。
今回は、長期金利を下げたいわけではないんです。
下がりすぎた長期金利を上げたいんです。
長期金利を引き下げる=国債を買う=金融緩和
長期金利を引き上げる=国債を売る(?)=金融引き締め(??)
ここに矛盾が生じるのです。
日銀は10年物国債の利回りを上げたいんですが、基本スタンスとして金融緩和は維持したいんです。
国債は買い続けるんです。
もし「国債売りますわ〜。」なんて言ったら、今まで施策として国債を大量に買いまくっていた手前、示しがつかなくなります。
長期国債を仮に売ったとしても、短期債利回りがマイナスでヒーヒー言ってる金融機関さん達が、せっかく日銀が売却して利回りを上げた債券を買ってしまい、またマイナス利回りになるなんて可能性もあります。
つまり、この
矛盾している状態をコントロールしながら長期金利を上げていくという点が前例に無いこと
なんです。
それが、イールドカーブコントロールなのです。
3年経って成功したと言えるのか

【出所】investing.com
上記の表を見ると、様々な課題は残っているもののオペレーション面では成功していると言えるでしょう。
実際にイールドカーブコントロールが導入された2016年以降は、10年物国債利回りがほぼ0%近辺まで上昇しそこからあまり動いていない(動かないようにコントロールされている)ことが分かります。
もともと日本の国債は世界と比べて変動幅が少ない債券で、米国の半分程度の変動幅でしたがイールドカーブコントロールによってさらに1/4程度まで変動幅をコントロールできました。
経済の仕組みを知ると見えるものとは

ミク
そもそもなんだけど、こういう経済用語とか仕組みがどう投資に役立つかがいまいちわからないんだけど。
確かに文言だけを知ってても意味無いけれど、仕組みを知れば予測が立てれるようになるよ。

マッケイ
それでは考えましょう。
イールドカーブコントロールは、日銀が「これからも長期金利は0%前後に維持するよ。」って明言してるんですよね?
ってことは、逆にいうとこれからも金利が大きく上がることは無いってことですよね?
金利が上がらないってことは、住宅ローンとかの長期借入金利も低いままってことが想定できますよね??
てことは、不動産指標(J-REITとか)が上がると思いませんか???
もしくは
国債の金利が低いままってことは投資魅力が引き続き無いので、少しリスクもあるけど利回りの高い社債の方が相対的に人気が高くなると思いませんか?
このように経済を知ることで、今後何が上昇しそうなのかがなんとなく見えてきます。経済を知ることは簡単なことでは無いけれど、知ると案外面白いことが見えたりもしますのでオススメですよ。