ハイパフォ投資家を目指す方にとって、運用コストという概念は最も重要なものであり、金融商品を選択する際には、過去パフォーマンスや、組み入れ銘柄、運用会社などよりも、まずは運用コストが自身の決めるライン以下である必要があり、そのラインは感情で変えてはなりません。
運用コストの基本的な考え方
保有中のコストには細心の注意を払いなさい
運用コストは主に、「購入時」「保有時」「売却時」にかかります。ハイパフォ投資家の中には、「ロボアドバイザー」や「ドル建て保険」、「ETF」、「投資信託」での運用をメインにしている方も多いと思いますが、これらは全て「保有時」に手数料がかかるものです。
長期分散投資をする上で、この「保有時」のコストというものには特に気を使わなければならず、運用コストを認識していないと、「株式マーケットは10年で50%も上がっているのに、自分の株式資産は30%しか上がっていない。」なんてことになるわけですね。この乖離は期間が長期に及べば及ぶほど大きくなります。
ここに積立NISAを同時に始めた二人がいます。積立期間は20年とし、積立額が4万円/月 です。どちらも年利5%での複利運用を実現できましたが、Aさんは保有期間中の運用コストの差は年1%とします。
20年運用をした場合
年数 | 元金 | 繰入後元金 | 利益 | 税引後利益 | 税引後元利合計 | 実質利回り |
20年目・Aさん | 9,600,000 | 14,530,589 | 6,248,144 | 4,978,833 | 14,578,833 | 51.863% |
20年目・Bさん | 9,600,000 | 13,338,411 | 4,735,948 | 3,773,840 | 13,373,840 | 39.311% |
運用が長期に渡れば渡るほど、この「たった1%の運用コストの差が100万円以上のリターンの差を生み、年利10%以上の違いを生み出します。
重要なのは、この二人は運用コスト以外の条件は何も変わらないということです。取ったリスクも運用資産額も変わらないんです。
毎月4万円の積立運用だけでもこれほどの違いが出るということは、金額がさらに大きければ、期間がさらに伸びればこの差はどんどん広がっていきます。
投資信託の運用コストをいくらか
投資信託・ETFでの運用においては、「保有時」の手数料が少なからずかかることを留意しなければなりません。
投資信託の保有時の手数料は「信託報酬」の呼ばれ、「純資産総額に対して」毎日差し引かれます。
この信託報酬は、販売会社(投資信託を販売する証券会社)、委託会社(投資信託の実際の運用を行う運用会社)、受託会社(信託財産を管理する信託銀行)で分配されるものであり、0.1%以下の投資信託から2%を超える高コスト投資信託まで様々存在します。
外貨立て保険のコストはいくらか
最近、死亡保険としての機能を持ちながら、外貨運用での運用も行えることで銀行を中心に販売額が伸びている外貨建て保険。
投資信託とは異なり、手数料体系が分かりづらくコストを把握していない方も多いのではないでしょうか。
まず外貨建て保険の手数料は、他の金融商品と比べて圧倒的に高いことを理解しなければいけません。保険会社にも商品性にもよりますが、大体5%~8%ほどの手数料設定が多いです。これは投資信託の0%(ノーロード投信)~3%に比べてもかなり高いことが理解できるでしょう。
それだけではありません。
保険会社は一定の積立利率で運用をされておりますが、実際にはそこから付加保険料というコスト(保険を維持するためのコスト)が差し引かれて運用がされているためさらに運用効率は落ちます。
そして、解約控除率(解約時手数料)も存在します。貯蓄型の一時払い保険であれば、途中解約すると1%〜10%の解約控除率が、終身保険であれば積立期間によりますが1%〜数十%の解約控除がかかることが多いです。
債券の運用コストはいくらか
債券のコストは少々複雑です。
手数料を明言しておらず、各証券会社が本来の利回りに手数料分を上乗せして投資家に販売します。
一般的には、「長期になればなるほど」そして「高利回り」であるほど上乗せ手数料は高いです。
米国債のようなシンプルで比較的利回りの低い債券であれば、短期になればなるほど手数料はほぼかからないものも多く、新興国債券(トルコリラ債、南アフリカランド債)やハイイールド債になると長期債では5%を超えるの手数料がかかることもあります。
そして、以外ですが、ネット証券の手数料率は必ずしも安くないという点もあります。
ネット証券だからといってコストが全ての金融商品に対して安いわけではないということです。
債券を購入する際は、できる限り同じ条件での債券を複数の証券会社に問い合わせ、利回りを比較しても良いかもしれません。
株式のコストはいくらか
株式のコストは金融商品の中でも最もシンプルです。
「買付手数料」と「売却手数料」のみです。これらは、金額によって手数料率が変わることが多9、各証券会社の手数料体系によります。一般的にはネット証券が安いので、ネット証券の活用をオススメします。
まとめ
全ての金融商品のコストを正確に図ることは不可能ですが、一定のコスト感を持っておくことが大事です。
以下に、ざっくりコスト感を示しますので、頭に入れておきましょう。
重要
【投資信託】
購入売却時手数料は無料が当たり前。信託報酬は1%以下を厳守。
【外貨建て保険】
6~8%+α。運用商品としては高コスト。最低限に抑えたい。
【債券】
全般的には安い。特に、国債や地方債、期間の短い債券は安いと言える。新興国債(トルコリラ債、南アフリカランド債、ブラジルレアル債等)の手数料は高く長期債券では5%を超える手数料率もありうる。
【株式】
ネット証券であれば安い。保有時手数料もかからないため、明瞭。金額に応じて無料、購入売却時手数料で0.1%以下のところも多い。
合わせて読みたい記事
