ファイバーインターナショナルはマッケイが以前からオススメしている米国グロース銘柄の一つでコロナ銘柄として現在爆発的な株価上昇をしています。
日本ではあまり馴染みのない企業ですが、なぜここまで株価が上がり続けているのかをビジネスモデルから紐解いて将来性を解説します。
FIVERRとは
FIVERRは2010年に創業され、2019年に米国でIPOを果たしたイスラエル初のスタートアップベンチャー企業です。
まずはFIVERRへの投資にあたり基本情報をまとめてみます。
・イスラエル発のクラウドソーシングサービス企業
・年間売上高77%増、粗利82%の圧倒的な成長率とビジネス効率(FY’2020)
・売り手ベースの珍しい取引スキーム
・直近の株価暴騰によりPSR50倍近い超割高銘柄
FIVERRのビジネスの根幹はクラウドソーシングプラットフォーム運営になります。
最近ではGIGワーカーと言って、組織に属することなくFIVERRのようなプラットフォームを利用しながら単発請負で収入を得るフリーランサーが国内でも増えています。
ちなみに日本では、
・クラウドワークス(IPO済)
・ランサーズ
あたりが同ビジネスを展開しています。
日本では諸外国と比べ比較的サラリーマン比率が高いのでこのようなGIGワーカーの存在はまだまだ稀有ですが、世界では会社が副業を認めているケースやクロスボーダーで受発注ができるこのような形式の職業がすでに一般的になっています。


FIVERRが公表しているTAM(最大マーケット規模)は$115Bnであり、マーケットサイズはかなり大きいのにもかかわらず、マジョリティはまだまだオフラインでの受発注に留まっているため実はあまりオンライン化が進んでいないマーケットでもあります。
この牙城を崩そうとしているのがFIVERRであり、単に単発請負プラットフォームとしてではなく雇用のあり方そのものやアフターコロナにおける働き方をイノベーター企業として根本から変えていこうとしているわけです。
FIVERRビジネスモデルの特徴
FIVERRは売り手となるフリーランサーと買い手となる発注企業をオンライン上でつなげることで双方から仲介手数料を取ることで成り立っています。
手数料率は契約金額の25%となっており、クラウドワークスやランサーズでもこの水準を維持しているので20%-25%が業界水準と言えます。
そして、あくまでもプラットフォーム事業なので在庫やフリーランサーの人件費をかけることなく書い手と売り手マッチングすればするほど仲介手数料が入るため粗利率84%というとても高い事業効率を実現できるわけです。
ちなみに、このようなビジネスモデルは買い手ありきで成り立っているという点が重要です。
基本的に米国市場では売り手(仕事が欲しい人)は溢れかえっているので買い手が集まれば必然的に売り手も集まるという構図です。
市場環境としては、コロナ禍において各企業のコスト削減策が一層進んでおり、オンライン上で単発の仕事をフリーランサーに発注することは企業にとっても固定費削減に繋がるため、アフターコロナを見据えてもこの流れが逆流することはなく、人材におけるオンラインプラットフォームビジネスはさらに加速すると見込まれます。
FIVERRが掲げる4つのビジネスモデルキーワード
FIVERRのビジネスモデルを理解する上で必ず抑えておきたい4つのキーワードがあります。
- Service-as-a-Product
- On-demand
- End-to-end platform
- Global community
Service-as-a-Product
FIVERRの受発注の根幹をなすService-as-a-Product は、他類似サービスとまったく逆の取引スキームです。
比較対象としてクラウドワークスのHPを見てみると、サイト構成が発注者ベースになっていることがわかります。

つまり、発注者が発注したい案件を登録することでその案件に受注者が各々手をあげて受注するというスキームです。
FIVERRではこのスキームとは真逆に受注者ベースの取引スキームになっており、受注者ベースのカタログを発注者が選択するようなイメージでスキームが構築されており、この方法は取引スピードを通常よりも手軽にスピーディーにさせます。

発注者は任せたい案件に対して最適なワーカーを選択するだけなので、発注者ベースのように請け負ってくれる受注者を待つこともなく、コンペをさせることもなくスムーズに任せたいワーカーに任せることができるのです。
そして、ワーカーにはランクがあり、質の高く人気のワーカーともなれば単発でも100万円を超えるような高単価人材をいる点もポイントです。
ビジネスリスクとして、直接ワーカーと企業が連絡を取り合うことでFIVERRへの手数料を回避できてしまう点においては現在のところ回避策があまりないのが現状です。
しかし、ワーカーにランクがつくことでワーカーはFIVERRで自身に箔がつくとともに、より仕事を受注しやすくなり、質の高い高単価ワーカーほど垢BANする可能性もある中外部で受発注を行うインセンティブが薄れてしまうというメリットがあります。
On-demand
人材雇用は大きく、フルタイム、パートタイム、単発請負の3つの部類に分けられます。
FIVERRはこの中の単発請負に特化したサービスを提供しており、人材を雇用することなく、長期固定契約を結ぶこともなく、必要な時に必要な時だけ発注ができる特徴を持ちます。
End-to-end platform
FIVERRは受発注の仲介業務をするだけでなく、そこに関わる一切の契約業務をオンライン上で完結させることができるシステムを有します。
単発契約といえど実際の契約から決済までの実務はとても煩雑で、
- フリーランスを検索
- 見積もりのやりとり
- 金額の最終確認、打ち合わせ
- 契約書作成
- 契約締結
- 納品物の確認
- 納品
- 請求書作成・発行
- 支払い
と多岐に渡ります。
このような実際の成果物の質とは関係ないようなビジネス上のやりとりは全てFIVERRに任せることができるので受注者は成果物のクオリティや提供スピードに徹底的にこだわることができ、それによって発注者もより手軽に発注することができます。
Global community
FIVERRではすでにグローバルな取引が可能となっており、直近ではプラットフォームも英語以外の言語での表記選択可能となっています。
収入の不安定さを拭えないフリーランスにとって、160ヶ国以上の国から仕事を受注できるディールスケールはとても大きく、また発注側にとっても国境を超えてより優秀なワーカーに仕事を発注できるメリットはとても大きいです。
ちなみに、日本ではまだマーケットサイズが小さくこのような働き方が浸透していないせいかFIVERRの進出の予定はありません。
FIVERRの財務状況
FIVERRの財務はキラッキラでイケイケです。

売上ベースではYoYで70%upとなっており、粗利益もまた80%upとなっており売上のほとんどが粗利益なっているという超高収益ビジネスモデルと言えます。

また、ビジネスモデル上買い手が集まり続ければ売上が伸びるようになっているますが、買い手も順調に伸びていますね。
特に2020年はYoYで約40%upとなっておりコロナ需要をうまく取り込みながら爆発的な成長を遂げています。
また、FIVERRは買い手の増加以外にも、売上を伸ばすためには発注単価を増やすという手があります。
これは高単価業務の発注を増やしていくか、受注者のクオリティをあげることで同業務でも単価の高い業務を増やしていくかになりますが、下の図を見るとバイヤーの発注単価も大きくなっていることがわかります。

また、売上構成として既存バイヤーと新規バイヤーからの売上割合も重要な指標です。

FIVERRでは2020年において、10年前のクライアントも一部売上に貢献をしていながら、新規クライアントの大幅増加により売上の約45%が新規クライアントからとなっています。
この手のサービスはいかに既存客からのリピートを増やすかも重要な施策であり、一方常に新規バイヤーも獲得しなければいけない為このコホートのバランスが重要になってきます。
また、恐るべきなのはマーケティング費用の回収についてです。

マーケティングROIとは
マーケティング投資額に対し得た利益率
FIVERRの場合は直近マーケティングに費やした費用は当クウォーター内にほぼ回収をしており、その回収率の速さはマーケティングROIとして現れています。
つまり、売上を新規顧客獲得の為の費用として費やし、それが早期に売上計上され、さらにそれをマーケティング費用に当てるという循環が高速でなされており、このマーケティングROIが高ければ高いほど、高い成長スピードを実現させることが可能なのです。
FIVERRの株価の将来性は?
FIVERRはコロナの追い風もあり、コロナ銘柄として現在も爆発的に上昇しています。

今年に入ってもすでに1.5倍に跳ね上がっており、YoYではほぼテンバガーを達成している状況です。
PSRが数ヶ月前まで30倍であったものがすでに40倍を超えており新規で購入するにはあまりにも高い株価ですがマーケット環境や成長性から考えると少しづつ保有していくには十分に投資に値する銘柄です。
ただ、現在の株価はコロナ特需によるマーケティングROIやそれに伴う新規バイヤーの増加を見込んでおり、コロナが終わったとしてもオンラインからオフラインへの逆流はほとんどないと思われますが、アフターコロナによる決算の鈍化はある程度考えられます。
株価自体がかなり割高な為、一度決算でコケると株価の急落は避けられない銘柄でもあるので、徐々に積み増していく方が無難な投資戦略だと言えるでしょう。

