こんにちは、外資系バンカーのマッケイです。
今日はバンカーとしても非常に興味深いビジネスモデルを有し、株価も昨年から今年にかけてうなぎ登りであるフィンテック企業SQUAREのビジネスモデルと株価の将来性についてお伝えします。
SQUAREは米国に上場しているフィンテック(決済系スタートアップ)で2021/2時点で時価総額$124Bを超える今最も注目されているフィンテック企業でしょう。
ちなみに米国を代表するフィンテック企業といえばVISA、MASTERCARD、PAYPAL、そしてSQUAREですが、個人的にポートフォリオとしてどれかは一つは長期保有すべき銘柄だと思っています。
直近の時価総額では、
・VISA:$451B
・MASTERCARD:330B
・PAYPAL:$336B
・SQUARE:124B
※2021/2現在
となっており、規模感としてはSQUAREが最も小さくそして現在最も勢いのある企業なので、当面はこの中でもビジネスモデルが似ているPAYPALに近づけるかどうかが焦点になりそうです。
それでは、SQUAREの基本情報をまとめてみます。
・大きくビジネスモデルはPOSレジとCASH APP(個人決済、送金)の二本柱
・コロナ禍において、POSレジはダウンサイジングしているもののCASH APPの伸び率が高い
・売上高成長率44%、粗利成長率42%の高成長率(2019Q3 YoY)
・社長のビットコイン好きは有名で、ビットコイン購入手数料が大きく伸びている。
・株価上昇率332%(2021/2 YoY)、2021年に入りすでに120%以上の上昇を見せている伸び盛りのフィンテック企業
SQUAREのビジネスモデル
SQUAREのビジネスモデルを分かりやすく説明していきます。
SQUAREのビジネスモデルは実はとても複雑で、細かなキャッシュポイントが多々あります。
したがって、この記事でそれらを全てカバーするのは難しいのですが、SQUAREは機関事業として「POSレジ」「CASH APP」の二本柱で成り立っています。

POSレジ事業
最近国内でも現金がレジの下から出てくるような大掛かりなレジをあまり見かけなくなりましたよね。
その代わりに、特にスモールビジネスの飲食店や雑貨店等ではipadのようなものを利用して小型の決済システムでカード決済をしている場面をよく見かけるようになりました。

このようなシステムを提供している一つの企業がSQUAREです。
日本国内においてもすでに成長局面に入っており、同じようなPOSレジでは「AIRペイ」「楽天ペイ」「STORES決済(旧Coiny)」が有名ですね。
POSレジのビジネスモデルは、店舗が決済システムを導入し顧客が決済をする際に決済手数料として売上の一部がSQUAREに入る仕組みとなっています。
日本国内では3.25%〜3.75%、米国では2.75%+10セントの手数料が決済される度にチャリンチャリン入るような仕組みです。
もちろんPOSレジ事業はただ単に決済だけではなく、周辺には請求書発行やオンライン決済、給与支払いにも対応しており、小売店舗には欠かせないビジネス上の一連の手続きがSQUAREで可能となっています。
特に、キャッシュポイントとして見逃せないのは「SQUARE CAPITAL(融資)」です。
POSレジ事業のすごい点は、決済による手数料もさることながらその小売店のキャッシュフローをリアルタイムに把握することが可能になる点にあります。つまり、小売店の経営状況が筒抜けになるわけです。
融資は基本銀行が行うものですが、その銀行よりも先にどのくらいの売上がありコストがかかっており、資金繰りに問題がないかどうかを把握することができるため、リアルタイムに融資額を提示することで面倒な手続きもなく簡単に事業資金が借りれてしまうわけです。もちろん収入はその利息ですね。
CAPITALについては決済手数料と並んでPOSの導入が進めば進むほど融資額も必然的に伸びるため同社事業を牽引するキャッシュポイントの一つなのです。
ただ、実際にはこの POSレジ事業はコロナ禍においてメインターゲットである飲食店等のスモールビジネスが大打撃食らっているため現在減速気味です。
それでも行業績がここまで強いのは次に説明する「CASH APP」の成長力に支えらえているためです。
CASH APP
CASH APPは個人間送金アプリです。
このアプリは非常に便利で送金はもちろん、カード決済や給与支払い、株やビットコインへの投資、現金の引き出しまでもできてしまいます。
また、生活資金の管理においても家計簿としての役割も持ちます。
ちなみに、日本国内においては、CASH APP程ではありませんが、マッケイも現在利用しているKAYSHがそれに近いビジネスをしており、日本ではCASH APPは利用できませんが利用イメージを知る場合にはKYASHがオススメです。

POSレジ事業がコロナ禍で苦戦をしている中、このCASH APPは爆発的な伸びを示しています。

すでにマネタイズもできており直近ではYoYで115%の成長を見せています。
CASH APPのユーザー伸び率は凄まじく、2020年Q2ではトータル3000万人のユーザーを獲得しています。
アクティブユーザーにおいても、700万人以上がアクティブユーザーとなっており平均して1ユーザーあたり1週間に3回のトランザクションが起きている計算となりYoYで50%の伸び率となっております。
これはただ単にダウンロードされているだけではなく、SQUAREの売上に繋がるトランザクションがしっかりと起きているという結果になります。
手数料の構成を見てみると、全体では2019年現在でYoY50%以上の伸び率を記録しておりますが主な収益源は個人間送金による手数料で、2番目に出金手数料、3番目には投資による手数料となっています。
ちなみに手数料率としては、
- 個人がCASH APP経由で決済すると、2.75%手数料が利用店舗より支払われる
- クレジットカードによる送金場合は3%が支払われる
- 個人が早急に銀行口座へ資金を出金したい場合は1.5%の手数料がかかる
- ビットコイン購入時に1.75%の購入手数料がかかる
キャッシュポイントとしてはこのような感じです。
単なる個人間送金であればマネタイズポイントにはなりませんが、利用していく中で個人がクレジットカードの代わりに利用したり、一部ユーザーがクレジットから送金したりすると、SQUAREはどんどん儲かるわけですね。
そして、CASH APP自体の利用者が増えて給与振込や個人間送金が多くなると当然CASH APPへの入金頻度が高まります。
それに伴って銀行引き落とし等で早急に出金しなければいけない機会があるとそれもまたSQUAREのビジネスチャンスになるわけですね。
SQUAREの財務状況と株価の将来性
それでは、SQUAREの財務状況について見ていきましょう。

売上全体としてみると毎年大きく成長しており、2018-2019では約143%の成長率、2020のTTMではコロナ禍でもさらに大きく成長しています。
また、コストについて注目してみるとおおよそ60%がコストとなっており粗利率40%程ですが、TTMを見てみるとコスト率が67%とかなり上昇しているのがわかります。
これは、CASH APPによるビットコイン販売のための仕入れコストですね。直近ではビットコインの上昇によって取引高が激増しており、それに伴って仕入れ額が膨らんでいます。
前述でSQUAREの売上はPOSレジによる収益とCASH APPによる収益に分かれるとお伝えしましたが、具体的に売上構成を見ていきましょう。

POSレジの売上は前年と比べ微増はしているもののほとんど成長しておらず、コロナ禍において特に2020の4-6はPOSレジの決済額が大きく下がったことにより当初3ヶ月は前年比マイナス成長を記録しています。
一方CASH APPの方を見てみると、決済額が200%以上伸びており、特にQ3では320%の伸びを記録しコロナ禍で苦戦するPOSレジ事業を補完するようにビジネスが回っています。
また、特に注目すべきはビットコイン販売による売上です。
Q3では前年比約10倍の売上を計上しており、仮想通貨需要もうまく取り込むことに成功しています。
仮想通貨に投資したい若者は多いものの口座開設や入金が手間でなかなか投資ハードルが高かったものが、CASH APPを利用することでビットコイン投資がとても身近になりました。それに伴いビットコインの仕入コストも増大し、全体の粗利率を下げている要因になっています。

株価についても、業績に準じて順調に伸びており、株価上昇率332%(2021/2 YoY)、2021年以降もすでに120%upの上昇率を記録しているものの、PSR自体は他のグロース銘柄と比較すると決して高PSRとは言えず、長期投資妙味は十分にあります。
今後の展望として、現在の成長力についてはビットコインによる恩恵がとても大きく、もしビットコイン価格が再び暴落した際には株価にも大きな影響が出る可能性は十分にあるので、ビットコイン保有者はトータルポートフォリオ株式を保有する際は注意しなければなりません。
とはいえ、引き続きCASH APPの伸び率は一段と加速する可能性や、現在POSレジの成長が完全に止まっていますが、経済が回復しこの分野がさらに伸びてくると全体の業績が数段上がる可能性もあります。
成長性や将来性はバツグンなので、ビットコイン価格とPOSレジの底入れを見極めながら徐々に買い増しスタイルが良いかと思います。

